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ゆず農家 File.13 番外編 村に新しいゆず仲間がやってきた

村山さん

弱冠20歳で北川村に移住し有機でゆずを作る村の新星

ここ数年、村の積極的な支援が実を結び、ゆずの新規就農者が増えている北川村ですが、人口約30人の北部地区に20歳の若者がやってきたと聞いて、取材班は畑を訪ねました。そこでひとり黙々と作業にいそしむ村山さんは、すでにプロの顔をしていました。絶え間なく鳥の鳴く声が山々にこだまし、ときおり気持ちの良い風が吹き抜ける畑で、話を聞きました。

「生まれは京都で、高校は三重の農業高校に通っていました。実家も農家だったし、卒業したら農家になりたいと思っていたんです。ミカンなどの柑橘が好きで、最初はミカン農家になりたいなあと思っていたんです。でも高校3年の秋に先生が見つけてくれた北川村でゆず収穫の手伝いをさせてもらったんです。それが楽しくて、そこでここの暮らしがイメージできたのが大きかったと思います」

北川に来てどのくらい経つのでしょうか?「こっちに来て2年と少しです。地域おこし協力隊の制度を使っています。現在は久江ノ上の松﨑さんに教えてもらっています。今いる畑は10年くらい耕作放棄地だった場所にゆずを植えさせてもらいました」

村山さんは農薬を使わずに有機にこだわってゆずを育てていると伺いました。

「はい。オーガニックで育てることにチャレンジしています。このやり方はとても難しいし手間もかかりますが、松﨑さんも頑張れば同じ品質のものが有機でもできると言ってくれ応援してくれています」

そう話す村山さんの表情からは、大変さよりも楽しさが伝わってきます。

「高校のとき地球環境を勉強して、それが面白くて、それで有機栽培にチャレンジしていますが、やはり安心とか安全に興味があるんです。手間はかかりますけどね。ゆずは虫が大敵で病気が蔓延しやすいんです。なので農薬を使わないならとにかく目が離せない。虫を遠ざけるために毎日毎日畑で木を1本ずつチェックしています。それから枝や葉に酢をかけたり、除草剤を使わない代わりに下にミントを蒔いてみたり、探り探りで実験しています。失敗してもいいので、まずはやってみないとわからないですからね。毎年なにかを変えて、成功も失敗も積み重ねて、自分のやり方を探し続けていきたいです。そしてもし僕がこのやり方でひとつの流れを作り、その結果として今よりも村がゆずで稼げたら、僕みたいに若いうちからゆずをやりたい人もでてくるかもしれないですしね」

村の暮らしにはどうでしょうか?

「北川村は自然が豊かで、本当にいいところです。月に1回街に出るくらいで、基本は家と畑にいます。夏は鮎突き、冬は鹿を獲って。野菜も育てていますし、毎日のように近所のおばあちゃんが何か届けてくれる。米は実家で作っているものを食べています。それから疲れたときは休むようにしています。ひとりなので、人様に迷惑はかけられないですからね」

これからどんなゆず農家になっていきたいですか?という問いに、村山さんはすこし顔をあげて答えてくれました。

「まずは僕を受け入れてくれた村や村民のみなさんに恩返しがしたいです。そして将来の夢は、多くの人に僕が作った有機のゆずを知ってほしい。ゆずといえば北川村。北川村といえば僕の名前があがるような存在になっていけたらいいなと思っています」

そのとき、壮大な夢の背中を押すように、森の中でさっきまではうまく鳴けていなかったウグイスが完璧な音階で「ホ〜ホケキョ」と鳴いたのでした。

村山さん(1) 村山さん(2)

「北川村ゆず新聞」より転載


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