本文へスキップ

北川村のゆずを支える人たち 第2回

牛窓さん

北川ゆずブランディングの門番「農協の牛窓さん」を訪ねて

新聞を作りながら毎号農家さんを訪ねるうちに、北川産のゆずの他との違いが、編集部員の僕らも感覚的にわかってきました。今回はJA高知県北川支所で20年以上ゆずに携わる牛窓さんを訪ね、その答え合わせができた気がします。今でこそ村の農家さんからの信頼の厚い牛窓さんも、最初は不安の方が大きかったといいます。

「北川村のゆずは高知県が誇るブランドです。伝統も歴史もある。最初は自分にできるか不安でした。でも農家さんはみんな情熱的でゆずに対しての思いが強いので、自分も必死でやっていたら、みなさんすぐに受け入れてくれました」

具体的な仕事の内容はどういうものなのでしょうか?

「簡単にいうと、ゆずに関わる全てです。農家さんが丹精込めて育てたゆずを預かり、搾汁、袋に果汁を詰めるまで。収穫の約2か月で300近い農家さんとの取引があり、最繁忙期はそれを50日間続けるのでかなりの量になります。ここでは保管できませんので、搾ったものは冷凍会社に運びます」

ゆずは、農家さんから購入しているのでしょうか?

「みなさん誤解されがちですが、委託で預かっているんですよ。預かって搾ってまとめて販売しています」

なるほど、まとめて販売すれば販路も広がるということですね。

「そうです。集めたゆずをまとめて搾るので、農家さんには基本にそってきちんとした栽培方法で作ってもらっています。農協はそれを販売して、農家さんにお返しする。その基本的な信頼関係の積み重ねで、今の北川のゆずがあります」

村のすべてのゆずがここに運ばれるのでしょうか?

「今は80%くらいでしょうか。わたしたちはどんな年でもゆずの価格を一定に保てるようにしています。以前は収穫量によって値段が変わったりもしたのですが、それだと売り手と買い手のバランスを取るのが難しいんです。なので今は安定した価格で卸し、安定した金額を農家さんにお返しできるようにしています。例えばかつては農協に持ち込まれるゆずが50%くらいの年もあったんです。というのも、ゆず収穫が少ないときはここだけでなく全国でゆずが貴重になる。おのずと販売価格は高くなるから、農協に持って来なくても高く売れるんです」

では農協に持ってくるメリットはなんでしょうか?

「たしかにある意味では農協は安いし面倒くさいことを言われる、という農家さんもあったと思います。でも僕たちは農家さんが安心してゆずを作れる環境を整えることが仕事だし、それで信頼をいただかなくてはなりません。JA高知は農家の所得増大を目標に掲げているので、農家さんに対してしてあげられることをすること。販売先と農家さんをつなぐことが農協の仕事なんです」

ゆずが好きじゃないとできない仕事ですね。

「実は僕、すっぱいものが好きじゃないんです(笑)。でも北川のゆずで焼酎を割ると本当に美味しいですよ。前の飲み会で他の産地のゆずも絞って比べたことがありますが、北川のゆずは最後まで味が残り、コクがある感じがします。高知県東部のゆずはオイル分が多いともいわれていて。北川村ゆず王国でもこんな話を聞いたことがあります。作業中にベテランの方が来て「今日は北川のゆずを搾っちゅうね」と言われたそうなんです。香りでわかると。

それはすごいですね!

では、これから北川村のゆずはどうなっていくのでしょう?

「北川だけで考えず、JA高知全体としてゆずを考えることが大事。そのなかで北川村のブランディングができることがまだまだあります。高知県のゆずの表記はだいたい2パターン。高知県産と、北川村産。北川はゆずをカタカナのマルキという印でブランディングしてきました。北川産のマルキ。古い問屋さんにもその認知は広いんです。安芸や物部も流通量は多いですが、ブランドの古さでは圧倒的に北川です。EUやドバイなど海外にも出ていますしね。量的なものも、取り組みの内容も含め、行政がここまでゆずに力を入れている場所もない。高知のゆずをぜんぶ高知県産とひとくくりにしてしまうこともできるけど、僕はその北川のブランディングをやる役割だと思います。北川のゆずの状況と、北川の行政の考えを、常に深く知っていて、それをJA本部と連携していく。というのが僕の仕事です」

やわらかな笑顔で北川村のゆずのブランディングを護る牛窓さんはさながら門番。繁忙期を迎える村のゆずが農協にやってくるのを、今年も準備して待っています。

牛窓さん(1) 牛窓さん(2) 牛窓さん(3)

「北川村ゆず新聞」より転載


PAGE TOP