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ゆず農家 File.08 濵渦さんちのゆず畑

濵渦さん

生まれた村でゆずを学び北川村ゆずの若き伝導師へ

北川村野川地区。その名の通り清流の流れる小さな集落のゆず畑で、その若者は穏やかな笑顔をたたえて我々を迎えてくれました。

濵渦清成さんはこの集落で生まれ、農業学校を卒業した20歳の頃から、もう12年ゆずに携わっている村期待の若手ゆず農家です。

「子どもの頃から父親や祖父がゆず農家を専業でやっている背中を見て育ったんで、僕にとって将来ゆずをやることはごく自然なことだったし、そうしたいと思っていました。たぶん父親の姿がカッコよかったんでしょうね」

濵渦さんはそう照れ笑いを浮かべながら話し始めてくれました。言葉を選びながら話すその姿は、彼の実直な性格を現しているようでした。

「3年ほど前に父が病気を患い、実質僕が中心になって濵渦家の畑を見ています。結果的にですが、それは自分自身が自立するいいタイミングだったのかもしれません。でもやってみたら、まだまだできないことが多くて、村の諸先輩方の教えもいただきながら、なんとか今日までやってきているといった感じです」

小さいころからやると決めていた農家をやってみて、どうだったのでしょうか?という問いに、彼は迷うことなくこう答えてくれました。それほどまでに現状を肯定できることって、なかなかできることではありません。

「毎日が充実しています。ゆずは本当にやりがいがあって、とにかく楽しいです。この自然の中で作業するというのがとてもいい。僕はもともとそういうのが好きなんです。天気のこともあるし、臨機応変に休みを自分で決めて作業している。それが僕にはすごく心地いいんですね。ただ、楽しいですけど、僕はこれで生計を立てていかなければいけないから、よりよいゆずを育てるためにまだまだ勉強しなくちゃならないことが山ほどあります。消毒や剪定も、常に『どうしたらよりよいゆずを作れるか? 』を考えながらやっています」

若手に対して先輩方はどう接してくれるのでしょう?

「村の先輩はみんな親切です。自分がわからないときは父と祖父もアドバイスをくれます。先輩方は僕の質問内容を、経験としてわかっていてくれるし、聞いたことを体験として答えてくれるんです。僕もそういう力をつけていきたいです」

これからどういうゆずを作っていきたいですか?

「青果の品質をあげて、みんなで助け合いながらよりよいものを作りたい。たとえば久江ノ上の松﨑さんのゆずはすごいんですよ。

成ったゆず玉のレベルがけた違いに違う。育てる過程のすべてが違うんです。僕もそうなれるようにがんばっていきます」

「これから北川でゆずをやる若者になにかアドバイスを」という質問に、彼はこう答えてくれました。インタビューの中でいちばん力のこもった声で、その表情は先輩の顔でした。

「不安はなんにせよあるものですが、やる気と熱意があれば大丈夫です!北川はゆずを始めるには最高の土地。いまは村が新規就農者に対して積極的ですし、ひとりでも新しい人が入ってきてほしい。絶対できますよ。北川村はとにかく落ち着けるんです。僕はここが地元なんで特にそうですけど、ここ野川地区なんて最高です。ゆず農家が増えて村が活気づいていったらいいですね」

話を聞いているあいだ、ずっと川の音が聴こえていました。とにかくここでゆずを作っていることが好きだという濵渦さんの屈託のない笑顔が印象的で、今でも心に残っています。

濵渦さん(1) 濵渦さん(2)

「北川村ゆず新聞」より転載


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